過去記 | こんな視点もいいじゃない。

過去記

9月24日土曜日。
17時に雨の渋谷へ降り立つ。
台風も近づいているこんな天気の日に足を運んだのは
久しぶりの青山劇場。
目的は、これまた久しぶりの、劇団☆新感線『吉原御免状』
を観劇するため。
「松雪泰子が喘いだ!」とか「京野ことみが脱いだ!」とか
「おひょいさんが・・・」とかで何かと話題(?)なあの舞台である。


新感線はとにかく大好きな劇団であるため
いつもここの芝居を観に行くときは
朝からウキウキハイテンションなのだが、
今日はいつものそれがあんまりない。
原因は、雨というのもあるだろうし、
チケットがA席という2階の後ろから数えた方が早い席ということも
あるんだろうけど、それだけじゃなく、
今回の新感線、しかも「いのうえ歌舞伎」であるにも関わらず、
珍しく、というか、かなり久しぶりに「原作モノ」だから、と
いうことが一番の大きな原因だった。
新感線には中島かずき氏という座付きの作家がいる。
最近は賛否両論もあるものの、私にとっても「いのうえ歌舞伎」は
やはり、中島氏の描く世界でなければならない。
「・・・でなければならない」なんて言い切る程、確固たる何かが
あるのかと言われれば、・・・別にないんだけど、
多分、ちょっとした身内贔屓的な気持ちと、
外の世界=原作に対しての食わず嫌い的な気持ちが
今回は大きかったんだと思う。


そんな気持ちで行った今回の舞台。
でもねやっぱりね、チケットもぎられるといつまでも
そんなクールな気持ちじゃいられなくなるわけですよ、
このお祭り野郎は(笑)。
新感線の舞台のオープニングはいつも大音量の
ジューダス・プリースト「DEFFENDER OF THE FAITH」から始まる。
聴いたことのない方にも分かりやすく説明すると、
いわゆる「ヘビメタ」ちゃんである。
ヘビメタやらハードロックのガンガンな音に乗せて、
チャンバラをやっちゃうんである、ここの人たちは。
その、最初の一歩となる始まりの音を聴くと、もうダメ。
あの、低音の一発目のバスドラを聴いただけでワクワクして
つい顔がにやける。
これからどんな世界が待ってるんだろう。
どんなところに連れて行ってくれるんだろう、と。



しかし。



今回の新感線は、なかなか私を良い旅には連れて行ってくれなかった。
いや、良いか悪いかだけで言ったら、「良い」んだよ、きっと。
だって悪くはなかったもん、全然。
でも、両手放しで「良い!もー、サイコー!」と言える世界でもなかった。
今回の新感線がご用意してくれたツアープランに、私がただ単に
「合わなかった」と言ってしまえばそれまでであるし、
本当に単純にそれだけのことだったのかもしれない。
なぜなら、この日のカーテンコールは合計5回も行われ、
4回目の時には1階席が全員スタンディング、ラスト5回目には、
2階席も含めて、会場すべてがスタオベ状態だったからだ。
ここ5、6年は欠かさず新感線の舞台に通っている私でも、
この光景は初めて目にするものだった。


私の中で、役者に対する評価が真っ二つに分かれてしまったこと。
話の起承転結が「のっぺり」(←自分的感覚)としていたこと。
この二つによって、「すごい!」が「当たり前」に、
「ん?」が「・・・(-_-;」に、自分でも気づかない間に自動変換されて
感じられたことが残念、というか、今思えば、悔しい。


でもね、なんだかんだいってても、凄かったんだよやっぱり。
歩き方も、倒れ方も、構え方も、殺陣も、
表情や声の色や、その佇まいだけでも、
凄い人達の凄いパワーで、舞台上は溢れ返っていたよ。
体はきちんと正直もので、その証拠に、観劇後の私の体調は
絶不調(笑)。
舞台上から受まくったパワーの「揉み返し」があまりに強大で、
パンパンに膨らんだ重い頭を引きずって帰りましたとさ。



次回、新感線の公演予定は、来年の初夏。
その名も「メタルマクベス」。
えーっと・・・シェイクスピアをメタルに乗っけちゃおうってワケね・・・。



今から楽しみで仕方がない。